東京都市大学二子幼稚園 園長インタビュー
園長先生に至るまでの経歴についてお聞かせください。
教員生活で初めて教壇に立ったのは大学です。その後、中学・高等学校、小学校で教壇に立ちました。小学校での教頭、校長時代に、子どもが主体性を発揮しながら学ぶための教育改革に携わりました。このことが、園長職就任に結びついたと思っています。小学校教育の“量”から”質”への転換課題は、あそびを中心とした幼児教育の価値に解決の糸口があると感じていたからです。幼稚園でのわくわくして楽しいと感じる体験は、小学校以降の「学び」の基盤となる資質・能力の育みに欠かせないものです。よく笑われますが、小学校時代、文部科学省のコンソーシアムの一員であったこともあり、本気で「日本の教育を変えよう」と思っていました。園長に就任してみると、教育を変えるまでもなく、教育の未来は幼稚園にあると感じています。
東京都市大学二子幼稚園(以下、二子幼稚園)の教育について、具体的な中身や特徴について教えてください。
教育方針は、「あそびを通して 学びに向かう力 豊かな心 たくましい体を育てる」です。保育教育の要は、「課題あそび」「自由あそび」「課外あそび」の“あそびの三本柱”です。課題あそびは、教員が作成したカリキュラムに基づいて進められるものです。食育、音楽、造形、多文化(国際教育)、運動と領域別にあり、知的好奇心、社会性、協同性、道徳性、忍耐力などを育みます。学びに向かう力、豊かな心を育成します。自由あそびは、子どもたちが自分の好きなあそびを見つけ、自由にあそびます。あそびこむ姿から、主体性や集中力、探究心や想像力、コミュニケーション力が育まれます。正課運動あそびとともに課外のサッカーあそびやミュージカルあそびでは、たくましい体が育まれます。他に、体験を重視した月ごとの行事、季節を感じる行事(夕涼み会、芋ほり、餅つきなど)、三大行事(運動会・子どもの発表会・子どもの音楽会)、ICT教育(KitSプログラム)、NHK交響楽団コンサート・移動動物村・観劇会などの本物に触れる教育、サイバードリーム・英語であそぼう・きっつアースなどの多文化・国際教育、水泳指導や科学体験教室など東京都市大学グループ、東急グループとの連携などが特徴ある教育活動です。
二子幼稚園ならではの特徴は何ですか?
東京都市大学グループと東急グループに支えられて、東京都市大学二子幼稚園の保育教育の充実が図られていることです。夕涼み会、運動会、遠足などの行事に、東京都市大学人間科学部の学生さんが子どもたちを見守るサポーターとして参加してくれます。付属小学校、等々力中学校・高等学校からネイティブ教諭が来園し、「英語であそぼう」の時間に英語活動を行います。また等々力中学校・高等学校理科部の顧問の先生と生徒が来園し、科学体験教室を開催します。さらに正課運動あそびや水泳指導、課外サッカーあそびでは、東急スポーツシステムのコーチが来園し指導します。こうしたグループ間の連携は、他園にはない特徴です。子どもの活動としては、『菓子皿づくり』が二子幼稚園の伝統的なものです。毎月の誕生会で出されるお菓子を載せます。自分で作った皿で食べるお菓子の味は、格別だと思います。年少から年長まで、3年間続く活動です。三大行事と言われる「運動会」「子どもの発表会」「子どもの音楽会」は、3年間の子どもたちの成長が確認できる行事です。時を超えて、二子幼稚園の保育教育の証が示されます。
二子幼稚園が求める教員像(人材像)についてお聞かせてください。
毎年年度の初めに、「幼稚園運営計画」(東京都市大学二子幼稚園保育教育ビジョン)のなかで当該年度の”求める教師像”を定めています。2024年度は、「子ども一人一人を大切にする教師」「保育力・教育力のある教師」「人として豊かで健康な教師」としました。時の園長によって、その時代の教員に求める“もの”は異なるかもしれません。ただどんな時代でも、次のことは「求める教員像」となるでしょうか。
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子どもの心身の発達や成長を第一に考え、愛情をもって適切な保育教育ができ、子どもとの信頼関係を築ける教師。
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教育保育に対する使命感や情熱、高い倫理観や規範意識を持ち、自ら学び続けることができる教師。
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「すべては子どもたちのために」という思いの下に、組織の一員として他の教職員と協力して業務を遂行できる教師。
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幼稚園教育要領に基づいて、指導計画を立案し、環境構成を行い、子どもの成長を自らが習得した保育教育技術を最大限に生かして援助ができる教師。
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幼児教育の知見(専門性)に基づいて個と集団に応じた指導と援助、クラス運営の在り方等を工夫し、省察し、改善を図ることができる教師。
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建学の精神、教育方針を理解し、実践できる教師。
・・・・・難しい問いかけで、なかなかまとめられません。「教員像」に正解はないのかもしれません。10人の先生がいたら”10の保育観”があります。どんな保育観を持ち合わせようとも、東京都市大学二子幼稚園の保育教育を理解し、実践できることが何よりも大切なことと感じます。
二子幼稚園の教員に求められる特性やスキルはありますか?
ピアノが弾ける、歌が上手、運動ができる、絵本の読み聞かせが得意、造形や制作に長けているなどは大切なことですが、何よりも深い愛情をもって子どもと接することができる、分け隔てない愛情で子どもと接することができることが大切です。「子どもたちの安全、健康、命を守り、安心して、楽しく通える幼稚園づくりに貢献できる明るく元気な人」「地域に根差し、信頼される幼稚園運営に貢献し、業務に前向きで素直な人」「『全員で一人を支える』という考えに寄り添える深い心の持ち主」「豊かな学び舎になるように、協力して業務に誠実に取り組める人」を求めます。「子どもたちのお手本」となり、「保護者や教職員、様々な人とコミュニケーションがとれる」「子どものささいな変化に気づく観察力がある」「『子どもが好き』という気持ちがある」「人として豊かである、人として豊かになろうとする思いがある」ことが大切と考えています。
今後、二子幼稚園をどのような幼稚園にしていきたいですか?
在園児、卒園児、保護者、教職員、地域の方にとって、『自慢の幼稚園』になりたいと思っています。幼稚園教育要領に『幼児の自発的な活動としての遊びは、心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習である…』と記されています。子どもがあそびを選び、主体的にあそぶ時間が保育教育活動の中で保証される園でありたいです。子どもの“やりたい”気持ちを大切にし、”あそびこむ”経験がたくさんできる園でありたいと考えています。自発的なあそびは、人としての「心の土台」をつくります。また「心の力」を育みます。やはり「課題あそび(一斉活動)」「自由あそび」「課外あそび」のバランスが取れた幼稚園として、小学校教育への接続を実感できる幼稚園でありたいです。幼児期の多くの経験や体験は、人生を豊かにします。二子幼稚園は、幼児期にしか体験できない「豊かなものがある場所」でありたいと考えています。幼児期から児童期への架け橋となる保育教育を進めます。魅力を輝かせ、「選ばれる幼稚園」にしていきたいです。
二子幼稚園の教員へ興味を持っている方へメッセージをお願いします。
東京都市大学二子幼稚園の子どもたちの挨拶は”日本一”です。明るく、元気で、活発な子どもたちです。年長さんは、笑顔で夢を語ります。子どもたちがあそびこむ姿は、たくさんの喜びと幸せ、驚きと感動を与えてくれます。幼稚園教諭は、人としての「心の土台」「心の力」が育まれる時期に関わる尊い仕事です。教員として、人として豊かであろうという思いがあり、心身ともに健康であることは大切なことです。『子どもと関わることで自分も成長したい』『笑顔と体力が自慢』『教えること、あそぶことが大好き』『保育教育に素直な気持ちで挑戦したい』など、未来を自分らしく走れる場所が二子幼稚園です。1955年に開園し、子どもたちの健やかな成長と安全で安心な園生活の実現に力を注いできました。社会の変化と時とともに変わる子育ての在り方に寄り添うように進化を遂げてきました。その過程は、質の高い保育とより良い教育をつくりあげてきた歴史です。子どもたちと過ごす園生活は、うまくいくことばかりではありません。そんな時に大切なのは、折り合いをつけて前に進む力です。毎日、毎日子どもたちが通園してきます。笑顔で迎えて、いっしょに楽しい時間を過ごしましょう。